これはラフマニノフの半音階幻想曲だ。半音階の渦や焔が焦燥、狂乱と化す中、ゆったりと墜落するジグザグ音型が縫うように垣間見える。
過激な和音進行、跳躍。しかし基盤はごく単純な主旋律…鼻歌で歌えるような…ここにも前衛と普遍性の両立が!
前半F durに突入するや、喜びの爆発を押し殺しているかのような唸りに転じ、全体の3分の2付近のgis mollで爆発する。Gis durと核融合するドッペル・ドミナントの軸とスパーク。
H音(gis mollと主調a mollとの共通音)を介して浮遊しながらA durを経て再現直前f mollに達し*、オクターブのバスが捻じれた音階で右手の和音と共に崩れ落ち、主調に帰る。ここでは四六の和音(ドミナント)が畳み掛けるが、それは古典のスタイルの踏襲と過激化だ。(*前半a moll→F dur、後半A dur→f moll)
最後はお約束のナポリの和音(B dur)。ショパンのノクターンの様に、有終の美。そして急速なジグザグ音型で収束。
ところで前半、F durに突入していく数小節、アルペジオの半音階下行をバスが支える形はバッハのインヴェンションNo.13後半とそっくり。両者a mollなのは偶然の一致か?
ラフマニノフ「練習曲・音の絵 Op.39-6」a mollを暗譜した。